宛先は天国ですか?




ますます嫌な予感がしてきて、わたしはぎこちなく微笑んだ。


「暖々ちゃんさぁ、」

語尾を伸ばす、いつもと変わらない早野先生の話し方。

そのはずなのに妙に違和感を覚えたのは、早野先生がわたしを下の名前で呼んだからか。

いつもみたいに可愛らしく語尾を伸ばすわけではなく、嫌な感じがする伸ばし方だ。


「5日に、将太と一緒にお茶かなんかしてたよね?」

その一言で、疑いが確信へと変わっていった。

将太さんの名前を知っていることもそうだが、将太さんと会った日まで知っているということはやはり。


「いました、けど」

たじたじになりながら、なんとかそう答えると、早野先生は「やっぱり」と言って笑った。

ふわっとした笑みのはずなのに、わたしを睨んでるようにも見える。

その視線に耐えるように、わたしは下を向いた。


「んーとね、率直に言うと、将太から離れてあげてほしいの」

申し訳なさそうに、早野先生は言った。

…話し方も冷たい目も、間違いなく目の前にいるのは夏帆さんだ。

わたしの目の前にいるのは愛らしい早野先生ではなくて、将太に想いを寄せるあの夏帆さんだった。