宛先は天国ですか?




断る理由もないわたしは、「もちろん」と微笑み返す。

早野先生はそれに対して、「ありがとう」と笑うと、歩き出してわたしを手招きする。

わたしは、それに何も言わずについていった。


着いた先は生徒相談室だった。

早野先生はわたしを先に入れてから、扉を閉めて鍵をかった。

カチャンと音がしたのを聞いて、わたしは不思議に思い首を傾げた。


「え、先生?」

何か人にバレたら嫌なことをするのだろうか。

でも、生徒に手伝わせる仕事に、人にバレたら嫌も何もないはずだ。

頭をよぎった嫌な予感を、必死に見ないふりして早野先生を見る。


早野先生はニコッと微笑んで、それからえへへと笑う。

だけどわたしを見つめる目はどこか笑っていない気がして、背筋がヒヤッとした。


「うーんとね、手伝ってほしいことがあるっていうのは嘘なの。

そうでもしないと佐川さんと2人で話すことができないでしょう?」

ふふっと笑った笑みが、以前会った夏帆さんとよく似ている。