宛先は天国ですか?




開いた扉の向こうから、キョロキョロと周りを見渡し教室に入ってくる先生の姿。

それも、今さっきわたしが聖也に名前を言おうとしていた早野先生だった。


「佐川さんいるー?」

コテっと首を傾げてみんなに声をかける早野先生。


相変わらず可愛らしいし、言葉も仕草もふわふわとしている。

夏帆さんはなんだかキツい性格だったし、やはり気のせいだろうか。


いろいろと考えながら、わたしはすっと手を上げた。

「いますよー?」

聖也に軽く「ちょっとごめん」と謝って、それから早野先生の方に行く。

先生はわたしを見つけると、またニコッと微笑んでみせた。


「どうかしましたか?」

問いかけると、早野先生は、

「少し手伝ってほしいことがあって、頼んでもいいかな?」

ごめんね、と申し訳なさそうな顔をしながらそう言った。