宛先は天国ですか?




夏帆さんが去っていってから、わたしからは何も言えず沈黙してしまう。

周りはいつの間にか騒がしくなっていて、時折こちらを見る人がいた。

…他人の修羅場って、見ててさぞかし面白いだろうなぁ。

向けられる好奇の目に、心の中で嫌味をこぼす。


しばらく夏帆さんの去っていった方を見つめていた。

それから、深呼吸にも思えるほど大きくため息をついた。


「見苦しいところを見せて、ごめん…」

ため息混じりに、そう呟いて、将太さんは自分の前髪をくしゃっとした。

変わらずタメ口のまま、わたしに軽く謝った。

わたしに向けられるタメ口も、将太さんのこういう一面も、初めてだからほんとにドキドキする。


「いえいえ、お気になさらず…」

とは言ったものの、将太さんのことだから気にしてしまうだろう。

そして、わたしも彼女のことについていろいろと気になる。


「あの、さっきの方は、元カノ…とかですか?」

聞いていいことなのか分からず、恐る恐る問いかけると、将太さんはコクっと頷いた。