ふと声のした方を向くと、男性が1人、わたしの手元を見て立っていた。
少しの間、わたしの手紙を見つめたあと、男性はニコリと微笑んだ。
「もしかして、その手紙の宛先は天国ですか?」
いきなり尋ねられ、慌てて手紙を自分の後ろに隠す。
見られたのかと思ったけれど、もうすでに6時を回っていて暗いから、よく見えないはずだ。
…じゃあ、なんでこの人はそれを知ってる?
「…その、まあ、そうですけど…」
そっと目をそらして答える。
彼はわたしの回答に満足がいったのか、「そうですか」と嬉しそうに笑った。
それから、じぃっと見つめていたわたしの視線に気が付いて、こほんと一つ咳払いをした。
「いきなり、すみません。
もしかしたらと思いまして、つい」
あははと笑って頭をかいたその人は、わたしに背を向けて立ち去ろうとする。
それを見ているうちに、わたしはふとその人の腕を掴んだ。


