むっと頬を膨らましてから、璃子が小さく将太さんを指差した。

「で、あれが暖々の好きな人?」

口元がニヤつくのを抑えながら聞いてくる璃子に、わたしは一度将太さんを見た。


…そうだよ。


その4文字が声になることはなくて、気が付けば首を振っていた。

「だから、手紙の人を好きなわけじゃないって、ただの知り合いなんだから」

否定の言葉を並べるくせに、それが将太さんには聞こえないようにする。

璃子はそんなわたしをじいっと怪しむように見てから、まあいっかと2人の方を向いた。


楽しそうに話していた2人に近付いた璃子が、樹さんの持っている袋を指差す。

「それ、あのアニメショップのですよね?アニメ好きなんですか?」

璃子の問いに、樹さんはにっと笑みを浮かべた。

「そうなんだよね!アニメもだけど漫画も好きでさ、よく行くんだよ!」

アニメの話になったためか、テンション高くなって敬語が抜けている。

…そういえば、将太さんはずっと敬語だよね。

樹さんの前でもなんだかタメ口じゃなかったみたいだし。