…残念だけど、わたしには将太さんの手を引く勇気なんてないから。
腰掛け、ジッと璃子の方を見る。
「…暖々さんの友人というのは、あの藍色の鞄を持っている方ですか?」
小さく指をさして、「あのポニーテールの」とわたしに尋ねてくる。
珍しく髪を上げポニーテールにした璃子。
ユラユラとその長くも短い髪を揺らしている。
長くない髪のポニーテールって、ちょこんとしてて可愛いよな。
と関係ないことを考えながら、わたしはコクンと頷いた。
服も青色がメインで、璃子らしさがあるというか、よく似合っている。
きっと本気で好きで、だからおしゃれにも気合を入れてきたんだろうな。
「もうそろそろ時間ですね」
腕時計を見ながら、将太さんがぼそっと呟いた。
時間を見るともうほとんど2時なのに、まだ相手は現れないようだった。
それから5分して、綺麗におめかしした璃子の元に駆け寄ってくる人が見えた。


