電車はあまり混んでいなくて、それでも座席に座ることはできなかった。
まあ仕方ないといえば仕方ないし、毎朝満員電車に乗っている身からしてみればこれでも十分空いている。
将太さんも電車通勤らしく、「やっぱりこの時間は空いてますね」とわたしに笑いかけてきた。
そりゃまあ、日曜日の、それも昼間ですから。
ガタンガタンと電車に揺られながら、やはりスニーカーの方がよかったと思った。
大人ぶって履いてきた、濃い藍色の、少しだけ高いパンプスでは、バランスを取るのが難しかった。
ゆらゆら、車体が揺れるたびにわたしも揺れる。
扉の近く、手すりを掴んでいるとはいえ、電車の揺れに耐えるのはなかなか大変だ。
ぎゅっと手すりをつかむ手に力を込めて、足を開き踏ん張ってなんとか耐える。
…こんな時こそ、授業で習ったボディメカニクスを生かさなければ…。
なんて、小さく足を開き姿勢をほんの少し低くする。


