那月君を弱気にさせてしまっていたことを知り、罪悪感を感じた。何か言い訳をしようと那月君の方を見ると、余程嬉しいのかにこにこと運転している姿が目に入る。
その姿に、胸がキュンと音を立てた。
デートの誘いを受けただけで、こんなに喜んでくれるなんて。那月君も、私のことを……その、す、好きでいてくれてるって、思っていいのかな?
もっと……素直になりたい。こんなことで喜んでくれる、那月君が愛おしい。
那月君を、もっと笑顔にさせたい。
「あ、あのっ」
勇気を振り絞ってだした声は、聞こえるか聞こえないか、そんな小さなものだった。
「え?どうかしましたか?」
そんな私の声さえ、きちんと受け取ってくれる那月君。
「日曜日、楽しみに、しています……」
那月君が、好き……。
今にも、そんな言葉が溢れそうになったのを抑えて、瞼をぎゅっと瞑った。
再び信号が赤に変わり、ゆっくりと車が停車する。
アイドリングストップがきく車なのか、車内は静寂に包まれた。
い、勢いで言ってしまったけど、那月君はどう思っただろう。いつもあんまり喋らないから……変に思われた、かな?
不安になり、恐る恐る目を開いた。
……それは、本当に一瞬だった。
頬に走った、柔らかい感触。
「……っ」
なに、今の……。

