【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。



外も寒かったし、車とはいえこんな時間に来てもらうなんて、那月君にも悪いな……。

そんなことを思っていると、スマホが音を立てた。那月君からの着信を知らせるもので、慌てて受信ボタンを押す。


『もしもし先輩?今着いたんですけど、マンションの番号教えてもらってもいいですか?俺持って行きます』

「那月君、ありがとう。私すぐに下降りるね……!」

『いえ、外寒いんで俺が持って行きますよ。先輩が風邪引いたら困ります』


少し外に出るくらいで、風邪なんて引かないのに。那月君って、心配性だな。頬が緩むのを抑えられず、きっと今だらしない顔をしているに違いない。

お言葉に甘えて持ってきてもらうことにし、番号を伝え電話を切った。すぐに、家のインターホンが鳴り響く。


急いで玄関の扉を開けると、真っ先に視界に映った那月君の姿。

どうぞと玄関に入ってもらって、扉を閉めた。同時に、寒い冷気も家へと入ってきて、身体がぶるりと震える。

さっきよりも温度下がってる気がするっ……。


「こんな時間に持って来させてごめんね」

「俺のお節介なんで気にしないでください。はいこれ、資料です」


資料の入ったカバンを渡してくれて、ありがたく受け取った。