【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。




居心地の悪くて、息苦しい。

二人で食事に行くなら……会社から、離れた場所にしないと。また社員の人に見つかったら、変な噂が流されてしまう。

『愛人』と誤解されることも嫌だったけれど、何よりも私が上と繋がりがあると思われることが嫌だった。

社長の知り合いだから、会社に入社できたなんて噂が流れた日には……一体、どうすればいいんだろう。

入社してから再婚したなんて言ったって、悪評ばかりの私の言葉を、誰が信じてくれるのだ。

那月君にも、いつかは言わないとと思うけど、出来れば言いたくはない。

わだかまりをいくつも抱えたまま、私はその日、一生懸命笑顔を顔に張り付けた。


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「はぁ、疲れた」


帰宅して、ソファの上に言葉の通り倒れ込んだ。クッションに顔を埋めて、これでもかと溜息を吐き出す。

もう9時だ。なんとか帰ってこれて、よかった……。

酔っ払ったお母さんに、家飲みに誘われて強制帰宅させられそうになったのを、必死に拒んで帰ってきた。

左吾郎さんに酔っ払った二人を任せて帰って来てしまったけど、悪いことをしてしまった……。

お母さんもお姉ちゃんもお酒弱いのに、あんなに飲んで……まったく。