どうしてそんなことを聞くのだろうと不思議に思い首を傾げると、那月君は前を見たまま言った。
「昨日友人に、映画の試写会のチケットもらったんです。良かったら、一緒に行きませんか?その帰りに、食事とかも……」
少し顔を赤らめ、反応を窺うように横目で私を見た那月君。
え?こ、これって……デート?
かあっと、一気に顔に熱が集まる。
嬉しい……。
「は、はい……」
それが、精一杯の素直な返事だった。私の返事を受け取った那月くんは、勢いよくこちらを向く。那月くんは、酷く驚いた表情をしていた。
「え!ほんとですか?」
口をポカンと開き、私を見たまま固まる那月君は、信号が青になったのすら気づいていない様子。
「ま、前っ」と言えば、那月君が慌ててアクセルを踏んだ。
そ、そんなに驚くこと?というより、那月君が慌てる姿なんて、珍しい。
「うわー……」
ぼそっ…と、ひとり言のように呟いた声が隣から聞こえる。
視線を向ければ、那月君の顔がほんのりと赤く染まっていた。
「断られると思ってたんで、ほんと嬉しいです。絶対、楽しいって思ってもらえる一日にしますね」
「う、うん」
そんな、頑張らなくったって……那月君といられるなら、どんな日だって素敵になるのに。
そんなことを私が思ってるだなんて、きっと那月君は知らない。
だって、断られると思ってたって言うくらいだから。当たり前か、私がこんな態度ばっかりとってしまっているから……。

