【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。




なんだか落ち着かなくて、そわそわしてしまう。

人のお家にお邪魔するのも、久しぶりだな。

なんだか、あんまり深く考えずに来てしまったけど、私、今日ここに泊まるんだよね?


……あれ?


泊まるってことは……つまり、え?

そ、そういう、こと?


「先輩、5分くらいでたまると思うんで、先にお風呂どうぞ」


パニック状態に陥りそうになった時、リビングに戻ってきた那月君が私の方へ歩み寄ってきた。

ど、どうしよう。私、何にも考えてなかった。


「あ、ありがとう」


そうだよね、付き合ってるいい大人が二人で過ごすんだから、つまりは、そういうことで……そういうことをするんだよね……。

い、いや待って、私まだ心の準備が……。だって、初めてなんだもの。

それに、この年まで何もなくて、拗らせてきたようなものだから……恐怖心も、大きくて……。

改めて、泊まるというのはそういう意味だったんだと気付くと、緊張して平常心ではいられなかった。


「先輩?どうかしました?」


そんな私に気づいたのか、那月君が心配そうに顔を覗き込んでくる。

私は慌てて、首を左右に振った。


「う、ううん!大丈夫」

「大丈夫って……もしかして、家来て緊張してます?」


えっ……。

図星を突かれてしまい、あからさまに反応してしまった。