【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。



全体的に黒で統一されたインテリア。シンプルなモダンテイストの、上品な室内。

那月君はもう少し明るいイメージがあったけど、部屋のセンスまで文句のつけようが無いなんて。那月君って、欠点はないのかな?


「飲み物入れますね。ソファに座ってくつろいでいてください」

「う、うん」


今更だけど私、今那月くんの家にいるんだ。そう思うと、さっきにも増して緊張してくる。

ソファふかふかだ。リビングもとても広い。

ついつい辺りを見渡してしまい、きょろきょろと視線を走らせる。
マグカップを持った那月くんが戻って来て、慌てて平静を装った。


「どうぞ」


あ、カフェオレだ……。

那月くんが渡してくれたマグカップには、ミルクたっぷりのカフェオレが。


「外寒かったでしょう?」

「ありがとう。……美味しい」


好きな甘さのカフェオレに、心も身体も温まる。そういえば同じ部署にいた時、よく那月君がカフェオレを淹れてくれた。

その時の光景を思い出して、頬が緩む。


「お風呂沸かしてきますね、俺」

「私も、何か手伝えること……」

「先輩はお客さんなんで、寛いでいてください」


あ、行っちゃった。

リビングから、出て行った那月君。