「いただきましょっか?」


那月君の言葉に控えめに頷いて、料理に手を付けた。

どれも凄く美味しい。那月君って、こういうお洒落なお店、たくさん知ってそう。


私はあまり外食はしないので、そういうものには疎い。

外でお食事をすると言えば……家族や、社長とご飯をする時くらい。


そう言えば、最近は家族とも出かけていないな。

何時もは心配性のお母さんのもと、ふたつきに一度は集まって食事をしていたのに。

もう、三ヶ月くらい会っていない。みんな元気にしてるかな。


「先輩、よかったらお酒飲みます?」

「那月君は?」

「俺は運転手なんで、飲みません」


面白そうに笑う那月君に、「そ、そうだよね」と返事を返す。


「ここ、有名なワイン幾つか取り扱ってるんですよ」



ワイン……。

とてもありがたい提案だけど、飲まない方がいいかもしれない。


「あの、お酒は……」

「もしかして苦手でしたか?」

「ううん、苦手ではないんだけど、弱くて……家以外では飲まない方がいいって言われてるの」


お姉ちゃんとお母さんに、きつく言い聞かされている。
わからないけど、私は人前でお酒を飲まない方がいいらしい。


「もしかして、飲み会にあまり出席しないのも……」

「酔うと記憶がなくなるの」


いつも、お酒を飲んだ後はベッドの上。目が覚めたら朝で、飲んだ後の記憶はすっかりなくなっていた。
正直、自分がお酒を飲んだらどうなるのかは気になるけど、お母さんもお姉ちゃんも何度聞いても教えてくれない。

そんなにひどい状態になるのかな……?


「じゃあ家とか、ふたりの時なら飲んでくれますか?」


那月くんの言葉に、こくりと頷いた。


「うん。那月くんとふたりなら安心して飲める」


自分の変貌が少し怖いけど、ふたりでお酒は飲んでみたい。
那月くんは、きっとお酒が強いんだろうな。そんな感じがする。


「俺、前の先輩も好きでしたけど……」


何か話し始めた那月君に、首を横に傾げた。


「今の先輩、ちょっと可愛すぎます」


那月君の顔が、少しだけ赤く染まっている。