「それでも、いいですか……?」


抱きしめ返す手に、精一杯の力を込めた。流れる涙が那月君のスーツにつかないように、必死に下を向く。

私の精一杯の告白に、返事はあっさりと返ってきた。


「……むしろ、そういう先輩をもっと見たいです」


なに、言ってるの。

外面を外した私なんて、なんの取り柄もない人間だというのに。この人は一体、どうしてこんなにもあっさりと、私がずっと求めていた言葉をくれるんだろう。


「ほんとうに、子供みたいで、私……きっと那月君も幻滅——「もう黙って、先輩」


少し身体が離れたと思ったら、再び距離がゼロになった。

先ほどよりも少し長いキスの味は、やっぱりよくわからなかった。

ゆっくりと離れていく那月君の顔は、嬉しそうな表情で……、



「何言われても、もう離してあげません。先輩の気持ちを知って……俺もう、抑え効かないですよ」



——この人は、こんな私ごと愛してくれるのだろうか。



「っ、好き……」


本当は、ありのままの姿で、那月君と接したかった。

素直な気持ちを伝えたくて、本当の私を見て欲しくて……

これからは、こんな私でいても、いいかな……。


「嘘みたいです。先輩が俺のこと好きなんて。……ガキみたいに喜んでる、俺」


先ほどまで、地の底まで落ち込んでいたのが嘘だったみたいに、

今は……幸福な気持ちだけで全身が満たされていた。


「那月くん……那月、君……っ」

「なに可愛い声出してるんですか、もう」


何度も何度も名前を呼んで、しがみつくように抱きついた。