【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。










「……よし、準備万端っ」


鏡の前で最終チェックをして、頰をぱちっと叩いた。
メイクも服装も髪型も、うん、大丈夫!

会社に行くときはいつも、スーツにヒール、髪は後ろで束ねているから、今日は下ろしてみた。

胸のあたりまで延びた髪は、緩い巻き髪に。いつもは付けないチークとグロスも付けて、服装は大人しめのエレガントなものを纏った。



今日は、日曜日。遂にやってきたデート当日。朝から気合い充分に、支度をしていた。

今から那月君と会えると思うだけで、幸せでたまらない。


おかしい所はないかな?

変じゃないかな、大丈夫だろうか……?


何度も自分の姿を確認して、抜かりがないかチェック。


スマホの画面を見ると、時刻は‪13:30‬。

あと三十分かと思っていると、LINEの通知が表示された。


【那月君:今から向かいます
     着いたら連絡しますね!】


最後に可愛らしいスタンプが添えられていて、思わず口元が緩んだ。

ふぅ……どうか今日は、ヘマをしませんように。


那月君から、マンションに着いたというLIMEをもらって、急いで家を出た。

エントランスから出ると、一昨日私を送ってくれた車が目に留まる。車の扉が開いて、カジュアルな服装を纏った那月君が降りてくる。


わっ、私服姿、初めて見た……。

かっこいい……。

私を探しているのか、キョロキョロと辺りを見渡している那月君。


「那月、君」


名前を呼ぶと、那月君は私の声に振り向き、ばちりと視線が交わる。