『百合花さん』


那月、くん……?

そっと、手を伸ばす。
すると、大きな手が私の手を握ってくれた。

でも……あれ?


『俺ですよ。桐生です』


目の前にあるのは、桐生さんの顔だった。


『桐生さん……?』

『那月さんはもういません』


そう言って、私に顔を寄せてくる桐生さん。


『だから、俺といましょう』


ま、待って……これは、どういう状況なの?

ゆっくりと近づいてくる、桐生さんの顔。

このままだと、唇が触れそうな距離だった。

い、いや……。




「那月くん……!!」



驚くくらい、大きな声が出た。

自分自身の声で目が覚めて、眠っていたのだと気づく。


今の……夢?

びっくりした……。


「はい、那月です」


ほっとしたのもつかの間、後ろ聞こえた声にまた驚く。

この声は……那月くん?


よく見ると、自分がベッドに横になっていることに気づいた。

それも、自分のベッドではなく……那月くんの家の。振り返ると、そこには那月くんの姿が。


「えっ……!?」


ど、どういう、こと……?