【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。




「大好きです……那月くん……」


俺の腕にしがみついたまま、百合花さんは動かなくなった。

……え? もしかして、寝てる?


触れるのはダメだと思ったけど、軽く肩を揺すって「百合花さん」と呼びかける。

完全に寝たな、これ……。


はぁ……聞きたいことは何も聞けなかったけど、可愛いからいいか。

とりあえず、どうするべきか……。

百合花さんの家なんて知ってるわけがないし、かと言って住所を聞くこともできなさそう。
完全に酔っているし、まず起きそうにない。

となると、選択肢はふたつ。

適当にホテルに泊まるか、俺の家に連れて行くか。

ホテルのほうがいいだろうけど、女性を抱えていたらフロントの人間に怪しまれそうだ。
家……は、流石に罪悪感があるけど、仕方ないか。



「百合花さん、帰りましょうか?」


ダメ元で呼びかけたけど、もちろん応答はない。


俺はふぅ……と息を吐いてから、百合花さんを抱えて店を出た。





俺は今、社宅に住んでいる。
急な移動だったから、会社が用意してくれたマンション。

別に寮ではないし、築浅の綺麗なマンションを用意してもらえたから最高だったけど……俺以外にも何人か同僚が住んでいるらしいから、誰かに見られないように気をつけないと。

百合花さんは社内じゃ有名人だし、変な噂を立てられたら百合花さんが困ってしまう。