【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。



「那月さんと付き合い始めたのはいつですか?」

「四ヶ月前です」

「それまでに、恋人は?」

「いたことありません」


少し恥ずかしそうに、そう答えた百合花さん。

ここにきて、とんでもない事実を知ってしまった。


いや、なんで?

いくら高嶺の花だと言っても、チャレンジャーくらいいたはずだ。
ありえねー……。

驚きのあまり、言葉を失った。

ていうか、ここまできたら百合花さんもストライクゾーンが狭い可能性が出てきた。

本気で好きになったやつとしか付き合わないってことだろうし……今のを聞いて、ますます諦めるなんて考えられなくなったけど。

俺は別に、女の人に純潔なんて求めてないし、他の男と比べられるのも全然いいけど。俺のほうが上だって自信があるから。


「も、もう那月くんの話はやめましょう」


恥ずかしいのか、視線を逸らした百合花さん。

那月さんの話っていうか、百合花さんの話だけど。


「どうしてですか?もっと聞かせてくださいよ」

「……こんな話を聞いて、楽しいんですか?」

「はい、めちゃくちゃ楽しいですよ」


できるなら、全部教えてほしいくらい。


「百合花さんのことは、なんでも知りたいです」


この人のことなら、全部知りたい。


「あの……それじゃあ私も、お聞きしたいことがあります……」


ん?

百合花さんがそんなことを言うなんて珍しくて、驚いた。

俺に聞きたいこと?


「なんですか?」

「私、男性の友人もいなくて……男の人の気持ちがあまりわからないので、アドバイスをいただけると嬉しいです……」


また健気だな……。