【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。




「普段は見えないってことですか」


否定してくれると思ったけど、「すみません……」と謝られてまた笑ってしまう。
素直すぎる。まあ別に、実際俺は適当な人間だからいいけど。

それに……そんなことはどうでもいい。


「で、どうなんですか?」

「え?」

「恋愛経験です。今までどんな男と付き合ってきたのかなぁって」


ここからはもう、仕事の話は終わりだ。
今日は根掘り葉堀り、百合花さんのことを聞かせてもらう。

俺の質問に、首を横に振った百合花さん。


「ん?」


意味がわからず、俺も首を傾げた。


「那月くんです」


……いや、それは知ってるけど……。
俺が知りたいのは、他だ。


「那月さん以外は?」

「いません」


どういう意味だ?


「いないって……?」

「那月くんが初めての恋人です」

「……」


……冗談?

いや、飲んでもないし、そんな冗談を言う人でもない。

……いやいや。

いやいやいやいや……。