【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。



「百合花さんと那月さん、ほんと仲いいんですね」


ぼそっと、耳打ちしてくる桐生くん。
息がかかるほど顔を寄せられて、肩が跳ねた。

ち、近い……それに……。


「あ、あの、誰かに聞かれたら困るので、ふたりの時以外は苗字でお願いします」


私も小声でそう言えば、桐生さんは「忘れてました」と笑った。


「寂しいですか?」

「……へ、平気です」

「そうですか。寂しい時は、俺に言ってくださいね」

「どうしてですか?」


桐生さんに言ったところで、解決はしないと思うけど……?


「俺でよかったら、ご飯でも行きましょう」


唐突なお誘いに、少しの間立ち止まって考えた。
これは……気遣われている?


「お気持ちだけもらっておきます」


本当に誘われたとしてももちろん断るけど、桐生さんは社交辞令で言ってくれているだけだ。