け、軽率だった……。
「あ、あの、やっぱり——「いいんですか?」
え?
なぜか驚いた表情で、目を輝かせている後藤君。びっくりして瞬きを数回した後、控えめに頷いた。
「あ、ありがとうございます!花京院さんのお弁当貰えるなんて、今日昼飯忘れて来てよかった……!」
「そ、そうなんですか?」
顔いっぱいに笑顔を咲かせる後藤君に、呆気にとられながらランチバックを渡した。
そんなにお腹が空いていたのかな……?そう思う程、嬉しそうな後藤君の反応。
こんなに喜んでくれるなんて思わなかったから、迂闊に提案してよかったかもしれない。
お弁当も、無駄にならずに済んでよかった。
「那月に殴られそうだけど、有り難くいただきます!」
再びにかっと笑った後藤君に、私は思わず頬が緩んでしまった。ほんとうに、無意識だった。
冗談にしても……殴るなんてありえない。
「ふふっ、那月君は、そんなことしませんよ」
可笑しくて、笑みが溢れるのを我慢できなかった。
と言うより、那月君の名前が出て、気が緩んでしまったのかも知れない。
先程まで笑っていた後藤君が、ありえないものをみるような目で私を見る。
すっかりその顔からは笑顔が消えていて、これでもかと見開かれた目には、だらしなく笑う私の姿が映し出されていた。

