「ふはっ……」


ダメだ、なんか可愛くて笑えてきた。


「む、無理です……!もう無理です……!」

「ゆ、百合花さん、大丈夫ですよ」


笑いをこらえなながら百合花さんの背中を叩いて、キャストの人に目配せした。
俺が言いたいことがわかったのか、怖がらせるのをやめてさっとはけてくれる。


「あ、もう出口近いですよ。俺の背中に隠れててください」

「……う、うん」


……うわ。

本人にそんなつもりはないんだろうけど、上目遣いで見つめられて、心臓に衝撃がくる。
それに、「うん」って……。

珍しく動揺している自分に、中学生かよと笑いたくなった。








おばけ屋敷を出て、近くのベンチに座った。

百合花さんはさっきから、うつむいたまま動かない。


「わ、忘れて、ください……」


何を言い出すかと思えば、百合花さんの第一声に思わず笑ってしまった。

まだ怖がってるのかと思ったけど……落ち込んでるのか?
俺に怯えている姿を見られたのが、相当嫌だったらしい。


「ははっ、あそこまでビビってる人初めて見ました」


俺の言葉に、百合花さんは顔を真っ赤にした。

……なんだ、この人……。

思ってたより、可愛げがある人だな。
失礼かもしれないけど、他の同僚からも懸念されているから……もっと気難しい人だと思った。

それなのに、さっきから反応がいちいち可愛い。