【side 桐生】


異動初日、いきなりオフィスにとんでもない美人を見つけた。

その日の夜、飲みに連れて行ってくれた上司が教えてくれた。
あの人はうちの高嶺の花だって。

あそこまでの美人と会ったのは初めてだから、出来るならば近づきたい。男なら当然の思考。
綺麗な花があれば自分のものにしたい。

ただ、特に仕事の用もなく、遠目から見ているだけだった。

数日間その人を見て、わかったのは……随分高飛車そうな女性だってこと。
いや、美人だったら多少性格に難があっても仕方ないし許容範囲だけど、なんていうか……周りの男を全く相手にもしていなさそうな態度だった。

普通、容姿が秀でている女性は、見た目を武器に使う。俺の周りにいた人間はみんなそうだった。
それなのにその人は、同僚の男性社員に媚を売るどころか、敵対ししているようにすら見えた。

周りの男なんかみんな、バカに見えるのかな。美人すぎて、男嫌いになったタイプか?
男なんか役に立たないって思ってそー……。

にこりとも笑わず、ずっと仏頂面で……見れば見るほど、興味を持った。