「よろしくお願いします、桐生です」


爽やかな笑顔だなと思ったけれど、少しだけ影があるようにも見えた。

腹の奥が見えないというか……苦手な人かもしれない。
なんて、人を見た目だけで判断するのはいけない。自分がされて嫌なことを人にしようとしていたことに、罪悪感が芽生えた。

ごめんなさいと心の中で謝って、第一印象が今後変わることを祈った。


「ねえ、噂以上にかっこいいよ……!」

「那月くんと同レベルだよね……!」


こそこそと話している会話が聞こえて、思わずぴくりと反応してしまう。

な、那月くんのほうがかっこいい……!
子供みたいに張り合ってしまった自分に、内心恥ずかしくなった。

挨拶をするように、笑顔を他の社員の方に向けている桐生さん。

ふと、彼が私の方向を見ながら、視線を止めた。

ん……?

じっと見られているのを感じたけれど、私ではないだろう。後ろの人かもしれないし。
彼も笑顔を浮かべたまま、すぐに視線を逸らした。





一週間後。
桐生さんは、あっという間に社内の有名人になった。
女性社員からの人気が圧倒的で、桐生さんを見に度々オフィスを覗きに来る人がいるくらい。

仕事もできる人らしく、何度か上司に褒められている姿も目撃した。