【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。



「どうしたんですかそんなに可愛い顔して。大丈夫ですよ。安心して話してください」

「うん……」

「もし先輩に前科があっても、バツイチとかでも、先輩への気持ちは変わりません」

「えっと、前科も結婚したこともないよ」


斜め上の方向に行っている那月くんに、苦笑いがこぼれた。

でも、冗談まじりのセリフに、なんだか心が軽くなった。

——よし。


「私……は、初めてなの」


言え、た。

言葉にすると、体の力がすとんと抜けた。

私の中ですごく、黙っているのが後ろめたいことだったから……気が抜けてしまったのかもしれない。
これで、那月くんに隠していることはもう何もない。

私はただ、那月くんの返事を待った。


「何がですか?」


あ、あれ?

那月くんは、私の告白の意味がわからなかったのか、不思議そうに首を傾けた。

一世一代の自白が不発に終わってしまい、恥ずかしくなった。
確かに主語がなかったし、伝わらないのも無理はない。

っ、一度言ったんだから、二度も三度も一緒だ……!

半ばヤケになって、もう一度、今度ははっきりと伝えた。


「その、男性と交際するのが……」

「ん?」

「な、那月くんが……初めてなの」


今度こそ、伝わったはず。

私の言葉に、那月くんは無反応。というか、固まってる……?


「な、那月くん?」

「……」


動かない……。

瞬きもせず、私を見つめたままピクリともしない那月くん。

目の前で手をひらひらすると、ハッと我に返った様子。