下唇を噛み締め、顔を歪めている那月くんの姿に戸惑う。
ただじっと、何か言いたげに私を見つめてくる那月くんを、見つめ返すことしかできなかった。
「本当に……すみませんでした」
ぽつりと、那月くんの口から零れた言葉。
謝罪……?
「今日呼んだのは、謝りたかったんです。連絡を無視してしまったことと……今日の、ことも」
真意がわからず見つめ返した私を見ながら、那月くんは苦しそうな声でそう言った。
「それなのに、どう切り出せばいいかわからなくて、試すような真似……本当にすみません」
別れ話をされるとばかりに思っていた私は、拍子抜けしてしまって、パチパチと瞬きを繰り返す。
謝られるなんて、思っていなかったから……。
どう返していいかわからずにいると、那月くんは私が怒っていると勘違いしたのか、ますます顔を歪めた。
握られている手に、力がこもったのがわかる。
「お願いです。帰らないでください」
ふたりきりの部屋に、那月くんの悲痛な声が響いた。
那月くんにこんな顔をさせてしまっていることは、申し訳なく思うけれど……正直、安心した。
別れ話をされるとばかり思っていたから、最悪の予想が外れたことに、こっそりと安堵の息を吐く。
よかった……。
那月くんの気持ちが、私から離れていたわけじゃなくて。