「戸締りとか気をつけてくださいね。もし不審者とか、少しでも不安になることがあればいつでも俺に電話してください」

「は、はい」


表情は優しいのに、目は真剣で、私はこくこくと首を縦に振る。
こんな風に、誰かに心配されることに慣れていなくて、戸惑いより嬉しいという気持ちが勝った。

それに、相手は那月君。

正直、過去に変な人に狙われたことが何度かあった。ストーカー類のものは、粗方全て被害者としての経験があるのではないかとさえ思う。

こんな私を狙うもの好きも、世の中にはいるようで、本当は……今も一人暮らしが、凄く心細い。


それなのに、那月君の言葉一つで、恐怖心が薄らいでいく。

流石に電話なんて申し訳なくてできないけれど、その言葉だけで充分嬉しい……。



「先輩、さっきのことですけど」

「え?」



さっきのこと?って、一体どのこと……?


「あの、俺にとってはって言うか……世間一般的に、先輩は本当に可愛いので。俺の周りのやつらも、先輩ほど綺麗な人見たことないって言ってますし……」


……っ。

顔が、再び熱を持つ。

思わぬ那月君の台詞に、私は目をまん丸と見開いた。


「先輩自覚ないのかも知れないですけど、社内では高嶺の花みたいな存在なんですよ。…ていうか、俺にとってはほんと……先輩以上に可愛い人なんて、後にも先にもいないので」


可愛いって……私が?

そんな訳ないっていうのは、わかっているのに。こんな可愛げの欠片もない私が可愛いはずないって、身の程は弁えているはずなのに……

そんなことを言われたら、自惚れてしまいそうになる。