【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。









後藤くん、もう来てるかな……?


キョロキョロと辺りを見渡しても、後藤くんらしき人は見つからない。

まだ来てないみたい……先に席取っておこう。


「花京院さん」

「……っ、わっ!」

「あ、すみません!そんなに驚かせちゃいましたか?」


背後から急に声をかけられ、驚いて振り返る。振り返った先に、いたずらっ子のように笑う後藤くんがいた。


「い、いえ」

「花京院さんのそんな驚いた顔、初めて見ました」


なぜか嬉しそうに笑う後藤くんに、どんな表情をしていいかわからず、視線を彷徨わせた。

驚いた顔って、そんな間抜けな顔しちゃったかな……。


「こっちに席とってあるんで、行きましょう」


後藤くんに案内されるまま、周りのテーブルとは離れた隅の席に座る。

ガラス張りだけど、個室のような席……。

あんまりラウンジは利用したことがなかったから、こんな場所があるなんて知らなかった。


「お昼食べましょっか」

「はい」

「勝手に食べる場所決めちゃいましたけど、花京院さん今日もお弁当でしたか?どこか食べに行く予定だったとか……」

「いえ、お弁当です」

「ならよかったです」


ほっと、安心したように息を吐いた後藤くん。