突然の出来事に、何が起こったのかわからず、言葉通りに固まった。
頰に残る感触に、漸くキスをされたのだと理解する。
鏡を見なくとも、顔が赤くなっていくのがわかる。
それは那月君も同じだったようで、頰に手を添え呆然とする私のすぐ目の前にある顔は、耳まで赤くなっていた。
「っ、すみません!!あの、本当にごめんなさい!!先輩が、可愛すぎて……体が勝手に……」
手で口を覆い、真っ赤な顔を隠しながらそんなことを言う那月君。
私が、かわいい?
那月君、目がどうにかなってしまったんじゃないだろうか……?
「か、可愛くありません……」
「え?何言ってるんですか、先輩は……」
何か言いかけた那月君の声は、後車のクラクションの音に遮られた。
信号変わってたの気づかなかったっ……。二人揃って周りが見えていなかったようで、また慌てて那月君が車を発進させる。
まだ頰に残る、唇の感触。
キス……された、那月君に。
恥ずかしながら、さっきも言ったように恋愛経験がない私。付き合ったこともなければ、実のお父さんと従兄弟以外の男の人とは、手を繋いだこともない。
どうしよう、那月君の顔が見れない。
目をぎゅうっときつく瞑って、頬を押さえる。
お互い顔の熱を冷ますのに必死で、家に着くまで一言も言葉を発することはなかった。
「あっ、ここです」
家の前につき、車を止めてもらう。
「一人暮らしでしたよね?」
「はい」