「また明日ね、駿」

駿に背中を向け部屋に入りガラっと、扉を閉めた。


「…まこと」

ひとりになった部屋に響いたその名前はつい最近まで忘れていて恨んでいた相手なのに。

今はこんなにも愛しくて名前を呼ぶだけで悲しくなる。


今頃リビングでは真の隣に栞さんがいて。

私は一生、あの場所には座れない。


離れたこの数年が大きくて。
私の知らない真が、多すぎて。


「栞さんが、うらやましいよ…っ」

このどうすることのできない気持ちが一気に溢れて、涙が止まらなかった。


はじめての恋が、こんな恋になるなんて思っていなかった。

もっと理想的な恋が、したかった。
幸せになれる恋がしたかった。

私はこれから先この想いをどう抱えて過ごせばいいのだろうか。

答えなんて出すことができないまま、ただただ頬には涙が伝っていた。