「駿っ…わたし…」
「え?」
あの瞬間あの場にいて、ダメだって思った。
そんなわけないって、あってはいけないんだって。
はじめてだったから。気のせいだって。
気のせいであって欲しいって。
胸が痛いのも、もやもやするのも、全部気のせいだって。
だけど、私本当は、知っていた。
前にドラマやなにかで見たことがあった。
誰かに対して自ら知りたいと思うのも、
傍にいてもやもやする気持ちも、
誰かを見て痛むこの胸も、
もっと、自分を見てほしいと思うこの気持ちも、
全部、全部。
“恋”だって。
恋なんだって、どこかで聞いたことがあった。

