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『ねえおかあさん』
『んー?なあに?』
『どうしてわたしのなまえはこころ、なの?』
それはある夏の日。
キッチンでそうめんを茹でてくれていたお母さんに不意に聞いた名前の由来。
お母さんはピタっと手を止めて、茹でていた鍋の火を止め私に近づいて同じ目線までしゃがみこんだ。
『心。あなたの名前はね、一人では成立しない名前なのよ』
『ひとりじゃ、せいりつしない?』
そのころの私はまだ幼稚園の子供で。
お母さんの言ったその意味がまだ理解できていなかった。
今ならすべての意味がわかるけどその時は理解することができなくて、ただひとつ。お母さんの言った言葉だけが頭で理解された。

