「心っ…」

「心配しなくてもいいよ。ちゃんと家には帰るしさ」

あの約束を破ったのは、お母さんのせいじゃない。誰のせいでもない。
むしろお母さんだってあの日泣いていた。
私と同じくらいに、泣いていた。

離れるって、決めたのは誰でもない。あいつ自身で―…

「お母さん、あいつのこと大好きだもん」


…それはきっとずっと一緒にいた私よりも。


「心?」

「お母さん、すっごい喜んでるんだろうなぁ…」

…苦しい。

別にお母さんお父さんに愛されていなかったわけじゃないのに。
むしろ、たくさんの愛を貰っているはずなのに。

なのに、なのに。


『これ、真に似合いそうねぇ』


一瞬で、その場にいないあいつにすべてを持っていかれるんだ。

昔から。