「ちょっと真…っ」
引かれる手を私の方へ引こうと頑張ってはみるが、やっぱり全然効かなくて。
「ねえ聞いて…「ん」
チケットを買わないと入れるわけないのに。
もう半ば諦めかけ小さな声で真に声をかけた時、目の前に二枚のチケットが用意されていて。
「えっ、チケット…」
「朝買っといた」
はい、と私にチケットを一枚渡す真。私はありがとう、小声で受け取る。
「だからあんなに早く?」
30分も前に家を出た真。
そっか、このチケットを事前に買っていてくれたんだ。
昔から優しいのは知っていたけどまた知らないこのさりげない優しさにドキッとして。
「本当、ありがとう」
私は握られている手をぎゅっと掴み、何度もお礼を言った。

