「珍しいじゃん?この前俺が言ったから?」

「ちっ…違うしっ」

「へぇ。まあいいけどね」

きっと真にはお見通しだ。
ニヤッと笑った真は私の手を取って歩こうとする。

「え…」

いきなり握られた手に、あっと我に戻り辺りを見渡す。

「大丈夫、だから。今日だけ」

「…え?」


「今日だけ俺の彼女になって」


前を向いてそう言った真の顔はどんな顔をしているのか、私には見えなくて。だけどはっきりその言葉は私の耳に届いていた。

「…真?」

だけどそれは、意味のわからない言葉だった。


今日だけ彼女?…彼女?
どうして?

だけどそれを聞くにも真は私の手を絶対に離さないような強さで握って歩いていくから。

私はただ、連れて行かれるまま歩くしかなかった。