「あっ…「心」
駿の声と重なり、あとからそいつの声で呼び止められる。
「…なに」
不愛想ながらにも言葉を返す私。
「…これ、食えよ」
振り向かない私の頭にぽんっと何かを置いて私たちから離れていくあいつ。
「…なに、これ」
意味も分からずただ頭に乗せられたそれを取ると、それは私の大好きなメロンパン、で。
「…なんでいきなり戻ってきたりするのよ…っ」
ずっと、ずっと忘れていた。
思い出したくなんかなくて。忘れていた。
ううん、本当は、忘れたかった。
だって思い出したくなかった。
思い出したら余計に会いたくなるから。
“ずっと一緒”に笑いあっていた、兄に…真に会いたくなるから。
嫌だった。

