私を好きだと、言ってくれた駿。
私をずっと、ずっと待ってると言ってくれた駿。

昔からずっと傍にいて駿のことならだれにも負けないくらい一番にわかっているつもりでいたけど。だけど本当はそんなことなくて。

私、駿のことも知らないことだらけだった。


一体今までどれほど駿のことを傷つけたのだろう。
一体今までどれほど駿のことを苦しめてしまったのだろうか。


考えても、考えてもわからない。答えなんて私が知るはずない。


だけど、ただひとつわかっているのは。



「…応えたい」

駿の気持ちに応えたい。


真への想いを全部追っ払って、駿の胸に飛び込みたい。許されることなのならば、駿に甘えたい。

だけどまだ、それをしてはいけない。それは自分が一番わかってて。


「前、に。」

手のひらを口に近づけた瞬間、とんとんと扉を叩く音が部屋に響いた。