卒業してからも、部活がらみで何度か高校へ来たことはあるけど、着なれないスーツ姿で在校生に向き合うのは、めちゃくちゃ緊張した。


高校生だった時は、教育実習生をからかってばかりいた。


いま、心の底から申し訳なく思う。


俺は化学の授業をするので、プリントを準備したり、講義内容を指導担当の先生にチェックしてもらったり、実験のリハーサルをしたり、とにかく忙しかった。


教育実習してみて、先生って本当に大変な仕事だって実感した。


授業以外にも、部活の顧問や保護者への対応など仕事は山積みだからだ。


実習をなんとか乗り越えて、俺には教師は向いてないって思い知った。



実習最後の日、高3の時の担任と他の若手教師、同じ時期に教育実習していた数名で、慰労会を開いた。


元担任は、


「お前たちの中には、就活に有利だからって教職課程とった人もいるかもしれないが、少しでも教師の仕事に興味をもったら、いつか採用試験を受けに来いよ」


と、励ましてるのかよくわからない言葉を俺たちに投げた。


実際、その場にいた実習生で教師をめざしている人は一人だけだった。


俺は、これから何を目指していけばいいんだろう。


もう就活してるっていうのに、まだ迷っていた。



そんな時、久しぶりに洋介から連絡があった。


専門学校を卒業した洋介は、実家とは別の美容院で修行してて、俺も何度かカットの練習台になってる。