夏休みが終わり、新学期が始まった。


ほぼ毎日、葵と会えると思うだけで、嬉しかった。


チャリをこぐ足も軽やかになるってもんだ。


始業式の日はさすがに朝練はないから、葵と一緒に登校しようと約束していた。


葵の家の前で待ってると、


「おはよう」


照れたように笑いながら、葵が出てきた。


久しぶりの制服姿は、めっちゃかわいくて。


ヤバいくらいドキドキしていたけど、必死でごまかした。


「おはよ」


冷静に言ったつもりだけど、声がうわずっていたかも。


さすがにニケツはできないから、並走したり縦に並んだり坂道ではチャリを押して、話しながら登校した。


「じゃあ、放課後ね」


「またな」


別々の教室へ入っていく。


なんで俺たち、同じクラスじゃねーんだろーな。


でも、同じクラスじゃ、授業がなんにも頭に入ってこないな。


「サク、おはよ」


「おはよ」


カオリは、前よりよそよそしくなった気はするけど、表面上は何も変わっていなかった。


その日は葵と一緒に帰って、ファミレスで昼飯食べてから、図書館へ行った。


図書館へ行ったこともなかった俺が、今では葵と一緒に週1くらいで通ってる。


人間関係で、環境って変わるんだな。



夏が終わり秋になり、体育祭・文化祭とイベントが続いた。


体育しか得意科目のない俺は、葵が見てると思うだけで頑張れた。


騎馬戦は最後まで競り合ったし、リレーもアンカーで盛り上げた。


葵はそんな俺を見て、今まで縁のなかった世界を知ったらしい。


サッカー部の練習もたまに見るようになり、ルールも少しずつ覚えていった。


葵は、塾のない日に図書室で勉強して、サッカー部が終わりそうな頃に合わせてグラウンドへ出てきて、俺を見つけて手を振ってくれた。