ギイッ————————


スーッと涙が頬を伝った時、屋上のドアが開いた。

バット振り返ると、そこには...


佐伯くんが立っていた。


「ごめん。さっきの階段でのやつ、聞こえちゃった。」

「・・・・・・」

「・・・・・・
 古内さんに好きな人がいることは知ってる。
 ・・・それが誰なのかも。
 ずっと見てきたんだ。

 自分と同じように辛い片想いをしている姿も見てきた。

 でも、それも含めて古内さんのことがやっぱり好き。」

それって。もしかして。茉胡のことも...?


...ああ。どうして私はこの人を好きにならなかったんだろう。

かっこよくて、バスケが上手で、こんなに優しくて。

こんな私の事を一途に思ってくれて。


でも、だけど...

「ありがとう。
 ...でもごめん。佐伯くん。
 私、やっぱり佐伯くんとは付き合えない。」


私は、やっぱり澄にいのことが大好きなんだ。

澄にいを諦められないんだ。

今は、まだ・・・。


「そっか...これからもそばにいるから。
 なにか話したくなったらなんでもいいから、俺を呼んで吐き出してほしい。
 ...お願いだから。一人でため込むな。
 俺はいつか。君にとって、一番にたよれる人になりたい。」

「うん...」

佐伯くんはそういうと、屋上から去っていった。

ありがとう、と小声でつぶやいた私の声は聞こえただろうか?