———————その時、俺は数日前の出来事を思い出していた。



数日前、あれは確か、終業式の日だったと思う。


俺がたまたま2年生の学年の廊下を通った時のことだった。


「......って!言いたいことがあるから。」

大きな声が聞こえ思わず足を止めてしまった俺。

教室のほうを向くと、一人制服姿の男の背中が少し廊下に出ているのが見えた。

制服の男は、たぶん教室にいる誰かと話しをしているんだと思う。


「え?」


え?


誰もいない廊下は、教室内の声がよく響く。

普通の声で話すと、廊下にまで聞こえてしまう。

だから、たぶん教室内にいた、その”誰か” の声が俺のところまで聞こえてきた。


たぶんその声が、ただの、って言ったらおかしいが、ただの生徒だったら俺は気にも留めず、その場から去っていたに違いない。

でも、俺にはそれができなかった。


なぜなら、先ほど聞こえた声は、俺が聞きなれた声だったから。


あいつが小さいころからたくさん聞いてきた。


俺の幼馴染の茉依の声だった。


茉依の声に反応できたことが、ちょっぴりうれしかった俺。


俺がにやけながら考えている間にも、2人の会話は続いているようだった。


「俺も、その日部活が休みなんだ。
 だからさ、その...


 俺と、どっか遊びに行かない?」

「・・・え?」


え?