ガラガラ——————

「・・・失礼します。」

ドアのほうから聞こえるその声に、俺の耳が反応した。

「・・・茉胡?」

ドアを向くと、そこには茉胡がいた。

「・・・あの。すみませんでした。」

茉胡からの第一声は、謝罪の言葉だった。

「・・・え。それは、何に?」

「・・・全部、です。」

そう言った茉胡の声は震えていた。

でも、俺は近づけなかった。

「あの、ごめんなさい。
 連絡を返さないことも、あの日からとお...先生を避けていることも。」

「理由を聞いてもいい?」

「...先生が茉依と何か関係しているのかな、って疑ってしまって。
 そしたら、先生と話しをすることが怖くなってしまったんです。」

俺の気持ちが言葉となって出たとき、茉胡への態度に出ていた...ということか?

「でも、思っていることはちゃんと伝えます。
 うちは、先生が好きです。誰よりも。
 茉依のことも大切だけど、先生のことは誰よりも大好きです。
 だから、先生は誰にも渡したくないです!」

涙を流しながら、俺の目をしっかり見て話してくれた茉胡。

その姿に、俺はどうしようもなく、どうしようもなく愛おしくなった。

俺はドアの向こうに人気がないことを確認してから、無言で椅子から立ち上がり、茉胡を抱きしめた。