「・・・はぁ...っ」

時間を確認しようと思って、時計を見た。



その瞬間———————



『とおるにい。
  あなたが、好き。』



黒板が視界に入り、去年黒板にそう書いたことを思いだした。

茉胡が澄にいに告白をした、あの日。

誰もいない教室で、一人静かに澄にいへの想いを書いたあの時の事を。


ポタッ——————

「・・・えっ?」

その音に、目を下に向けると、視界がぼやけた。

ポタポタッ———————

「あれ?」

どうして、どうして?

どうして、私は泣いているんだろう。


1年前、自分がいかに最低かを自覚し、茉胡の協力をしようと決めたあの日。

茉胡が澄にいに告白をしたあの日。

茉胡から澄にいのことを聞いてきた日々。

ずっと、ずーっと思っていた。


私の気持ちは、心の奥底に押し込んだ。


でも、いくらそう自分で思っていても。

いくら言い聞かせても。


私の心は、『澄にいが大好きだ』と、そう叫んでいた。

『大好きで大好きで仕方がないんだ』

『本当は誰にも渡したくない』



その本当の気持ちに、私は気づかないふりをしていた。

でも、限界が来たようだ。

本当の気持ちに気づき、


”5分だけ。”


そう自分に話し、ただひたすら、こぼれる涙を自ら止めることはせず、流し続けた。


声は、一切あげることなく。


ただ、ひたすらに。