でも、澄さんのことも渡したくない。


自分にこんな部分があるなんて知らなかった。

自分はもっとスパッとしてると思ってた。

でも、そんなことなくて、澄さんのことも大事、でもそれと同じくらい茉依のことが大事。

だから、どうしていいかわからない。

訳もなく急に泣きたくなって、泣いてしまったことがこの2週間でよくあった。


2週間の間で、いろんな子が話しかけてくれた。

「話聞くよ?」
「トイレ行く?」
「道具取りに行こう?」

でも、どれも違う。

うちが求めてる声じゃない。


『茉胡』

『茉胡、うるさい。』

『あははっ!』


うちの人生に必要なのは、絶対的に茉胡の声なんだ。

でも、いざとなると何もできない。

そんな自分が嫌だった。

そんな自分は、澄さんには釣り合わない。

自分はこんなにも何もできないものなんだと知らされた。


席替えで離れてしまった茉依。

ボーっと茉依の席を見るのが、最近の癖になっていた。


・・・そろそろ、茉依と話がしたい。

でも、自分から話しかけることが怖くてできない臆病者。


そんなことをぼんやり思っていた時、ずっと聞きたかった声がすぐ近くで聞こえた。


「ねえ、茉胡。」





茉胡side END