「声でかい。頭に響くから、やめて。」

小さい声で、けれどもはっきりとそういった言葉を聞いて、はっと我に返った俺は、口を閉じた。

「あ、ごめん。」

何も返事をせず、自力で立ち上がろうとする茉依。
けれど、熱で力が入らないのか、また倒れ込んでしまう。

それでも動こうとする茉依を見て、いてもたってもいられなくなった。

「・・・ったく、無理すんなよ。」

そういって、俺は茉依の体を持ち上げた。

「・・・っえ?」

具合が悪くてボーっとしていても、意識はちゃんとしっかりあるようで、俺の行動に驚きを隠せていない茉依。

・・・あっつ。

茉依の体は、とてもあつくて、熱があることがよく分かった。

「ほら、どこに行けばいいんだよ。」

「いや、でも風邪移る...」

そんなこと気にしてる場合かよ...

「いいから。ほら、どこ?」

「・・・っあ、えっと、私の部屋。」

「了解。」

こんな体で、よく玄関までこれたものだ。
相当具合悪いはず。

「鍵、ちゃんと閉めたかな?」

部屋に向かって歩いている途中、急に茉依がそんなことを話し始めた。

「大丈夫、閉めたから、安心しろ。」

俺の答えには何も答えず、また、こんなことを言った。

「・・・ああ、これは夢か。」

なんとも、うれしそうに。幸せそうにそういうから、思わず俺の胸がときめいた。