動いた俺らにとって、この時期の外は何とも言えない、気持ちいい場所だった。
ドリンクをもって、外にでると、さっきまで体育館を見ていた彼女の後ろ姿が目に入った。

彼女は足元にある花を見て、微笑んでいた。

————————ドキッ

きれいすぎるその表情に心を奪われた。のもつかの間、次の瞬間俺は驚きのあまり体育館の扉に手をぶつけていた。

「・・・いった。」

「悠弥、何やってんだよ。」

「すみません」

俺の突然の行動に驚きながらも笑って指摘した先輩を何とも言えない表情で見返しながら謝った。

そして、すぐ彼女に視線を戻す。

彼女は...泣いていた。


「私は、やっぱり、やっぱり澄にいのことが好きなんだ。」

彼女と俺の距離は、近いわけではない。だからといって、すごい遠いわけでもない。
それなのに、彼女の小さな声が俺の耳にはしっかりと入ってきた。

つぶやいた彼女の声は、消え入りそうなほど繊細で、悲しくて。
聞いているこっちまで泣いてしまいそうな、そんな声だった。

”澄にい”

彼女のいうその人が、誰なのか、俺は知っている。

いつも彼女を見かけるとき、彼女の視線の先には必ずその人がいるから。

気づきたくて気付いたわけじゃない。

彼女を見ていたくて見ていたら、気づいてしまった。