「まーいっ、ただいま」

「ん?あ、おかえり。」

俺の存在には今気づいたようで、いつものように笑顔でおかえりと言ってくれた。
それでも、その表情はどこかさみし気で、悲しげで、その上に笑顔を貼ったような表情に俺には見えてしまった。

「・・・茉依?」

「ん?何、お兄ちゃん。」

でも、またすぐにいつものような表情に戻った。

・・・おかしいなあ。気のせいか?

いや、そんなわけない。
茉依が生まれてから、茉依をこの手で、腕で抱いた時から、俺は茉依を守っていくと決めたんだ。

茉依を気づつけるような奴は、絶対に許さない。

「・・・お兄ちゃん?」

・・・気のせいなのか。

いつも通りの表情の茉依に、これ以上疑うのはダメだと思い、話題を変えた。

「澄、茉胡ちゃんと付き合ったんだってな。
 茉依が背中を押してくれた、って澄言ってたぞ。」

「・・・あ、そう!そうなの。
 茉胡がね、澄にいのこと一目惚れしちゃって。」

澄と茉胡ちゃんのことを話したその瞬間、茉依の顔に、表情のない笑顔だけが残った。

いつものようなかわいい笑顔じゃない。

ただ、ただ頬をあげて口角をあげて作ったような笑顔をして茉依は話した。

「・・・そっか。ま、そういうこともあるよな。
 んじゃ、お兄ちゃんお風呂入ってくるな。」

「あ、うん。」