「困ったなー。中にいろいろ置いてるのに」
成宮が少し考えてから、ニヤッと笑った。
「俺はこんなの知らない。だから、遠慮ナシに入らせてもらいまっす。失礼しま~す」
バカヤロウ。
普通に、なかったように部室に入っていく成宮。
「……」
誰がかけたのなんか知らないから、俺も入らせてもらった。
部室の中はいつもと同じで、何も変わっていなかった。
じゃあ、あの札はなんだったんだろう。
かける意味なんかあったのだろうか。
むしろ、かけるんだったら、事前に説明くらいしてくれればいいのに。
というかしろよ。
何で入ったんだとか聞かれても、これだったら答えようがないじゃんか。
俺は知らないぞ。
説明されてないんだか
一通り言い訳を考えてから、カバンを置いた。
そして、それと同時に後ろのドアが開いた。
「…キャプテン……」
「ヤジーセンパイ…」
「ヤジーセンパイはやめてくれ…」
野球部のキャプテンだ。
「ヤジーセンパイ、どうしたんっすか。というか、なんで〝使用禁止〟なんすか」
あ、成宮はまた「ヤジーセンパイ」つった。
そのあだ名嫌ってるのにな。
というか、俺もそのあだ名はどうかと思う。
成宮の言っている「ヤジーセンパイ」は、野球部のキャプテンで、八嶋っていう人で、まぁとても温厚な人だ。
「ヤジーセンパイ」は名字からきているらしい。
八嶋だからといって、可哀相だと、後輩ながら同情してしまうのも、しょうがないと思う。
